23.環境が人を作り、最大の環境は人である

当社では、日経新聞のほかに、日経ビジネス、ハーバードビジネスレビューを購読しています。ネットではウェブ業界の情報ばかりが入ってくるので、社会の平均的な話題や、世界の話題に触れ、自分自身の視点が業界の視点に凝り固まらないようにするためです。

人は情報から世界観を形成し、それを前提に決断をします。
そして、もっとも多くの情報をもたらすのは人です。
だからこそ、自分が囲まれている人によって自分が出来上がるとも言えます。
常日頃から情報を共有する人たちと価値観が似てくるということです。

人は自分と似た価値観の人といると、どんな話をしても話が合い、ストレスが少ないので、ついつい似た価値観の人たちで集まってしまいがちです。
しかし、その枠から一歩外に出ると、今まで当たり前と思っていたことがかならずしも当たり前ではなく、違う価値観もあることに気付きます。
そこで自己否定が生まれ、次の段階への成長につながるのです。

尊敬できる自分になるには、尊敬できる人たちに囲まれて過ごすことです。
また自己革新をするには、自分と価値観の異なる人たちに囲まれて過ごすことです。

22.作業に逃げるな

以前お世話になった大変優秀なデザイナーさんは、ウェブデザインをするときにほとんど手を動かさず、デザインを見ることにじっくりと時間をかけていました。
少し触っては、腕を組んで数十分も考えるのです。1ページをデザインするのに数時間かけていましたが、ツールに触れる時間はわずかでした。

一見すると、のんびり仕事をしているようにも見えますが、実際は彼の頭の中では、すごいスピードで思考が巡り、よりよいクリエイティブのためのシミュレーションが繰り返されていたことでしょう。

逆に、ずっとツールを動かしている人はとても忙しく仕事をしているようですが、思考よりもツールの操作がボトルネックになり、頭の中は休んでいる状態が多いと思います。
こういう仕事をしていると、手はたくさん動いているので、本人的には「働いている」という実感がありますが、よくよく見てみると、作ってみて、間違いに気づき、結局やり直す、という無駄な作業がたくさん生じてしまうのです。
本当は、もっとじっくりと考えて、ゴールを見通してから作業をしたほうが効率が良いのではないでしょうか。

これはデザイナーに限った話ではありません。

知的労働をするすべての人に同じことが言えます。
企画書を作ろうと思うと、ついついプレゼンテーションツールを立ち上げてしまう。そんな方が多いでしょう。しかし、それは設計図も書かずに家を建てるようなものです。設計図も書かず、いきなりのこぎりや金づちを持って動き始める大工さんに良い仕事ができるとは思えません。

経営も同じです。

経営戦略のシミュレーションを十分にせず、本当にうまくいくのかどうかを見通さないまま経営をしている方が多いのではないでしょうか。

もっともっと、考えることに時間を割きましょう。

私の場合は、デザインでも企画でも、ほとんどの時間は紙とペンを使って考えています。
そして、ある程度固まったら、マインドマップツールで優先順位や大小感を整理し、実現までのイメージを見通してから、初めてツールに触れます。
デジタルで資料を作成せず、手書きの殴り書きの資料をコピーして配布することもしばしばですが、それができるのは、内容に価値があると考えるからです。

21.フォーカスアンドディープ

やるべきことはたくさんある。

すべてに手を付けることはできない。
また、手を付けても、やり遂げるのはさらに難しい。
一つのことをやり遂げているか。
できていないなら、もっと絞り込んで、もっと徹底的に掘り下げよう。

どんなことでも、本当にやりぬくと、大きく何かが動く。
やっても効果がなかったら、まだまだやりぬいていないということ。

20.絶対に必要なものの中から何かを捨てる

新しいことを始めるためには、今やっていることの何かを捨てる必要があります。新しい取り組みが大きなものであったり、急いでいればなおさらです。

「そうはいっても、今やっていることはすべて大切で、やめられない」という方がおられます。しかし、どうしても捨てられない、と思う仕事の中から、無理やりにでも何かを捨てるからこそ、新しいことに着手できるのです。捨てることで短期的に経営が悪化することもありますが、新しいことへの取り組みによって、長期的に経営にプラスになる面があるはずです。

経営者たるもの、今やっていることはすべて重要なのは当たり前です。それでも、もっと重要なことをやるために、何かを捨てる。だからこそ、事業が変化し、前に進むのです。

19.できるだけ少なく関わる

コンサルタントはアドバイスによって報酬をいただきます。報酬が高いほど、コストパフォーマンスは悪くなりますから、お客様の満足度を高めるためには、極力報酬を低くする必要があります。そのためには、出来るだけかかわる範囲を減らし、コストを減らすことです。たくさんかかわって、お客様をVIP待遇することが良いコンサルタントではありません。

契約をしたらクライアントの資産は自分の資産です。極力節約し、効率の良い方法で目的を達成しましょう。もっとも良いコンサルタントは、最小限のコストで、最大限の成果をもたらすコンサルタントです。

18.ポストが赤いのも経営者の責任

曲面ミラーで有名なコミー株式会社の小宮山 栄社長の言葉です。

経営者は、理不尽なことでも、すべて自分の責任だと思え、と言う意味です。経営をしていると、環境変化やたまたま運悪く、従業員の事故や病気など、コントロールの及ばないさまざまな問題で経営危機が訪れます。それを、「運が悪かった」と嘆いていても始まりません。そんなことがあっても、「自分の準備不足だった」「次に同じようなことがあった時に備えよう」という当事者意識が必要なのです。

社内だけではなく、社外、業界、社会、世界、すべてに思考が及び、そのリスクを覚悟しなければ、経営は苦痛になるでしょう。

17.お客様が本当に求めているものを知る

お客様が、「ネットショップを作りたい」と言ってウェブ制作会社に相談したとします。しかし、お客様がネットショップでやろうとしていることは、仕入れ品を右から左に流すだけのネットショップだったとします。おそらくそれでは売れません。その時、「それではウェブサイトを制作しましょう」と言ってよいのでしょうか。

本当にお客様が求めているのは「ネットショップ」ではなく、「利益」ではないでしょうか。それなら、利益を生み出す提案をすれば何でも良いのか、というとそうではありません。コンサルティングをしていると良く感じることですが、経営者が求めているのは単なる利益ではないのです。事業の状況が良くない企業であれば、より利益を出すために、新しい取り組みをしなければならないときがあります。しかし、経営者としては、そのやり方が好きではない。市場が求めていて、社会にとって良いことだとしても、それをやりたくない、と言う方は多いのです。そこに、「経営者の求めるもの」が見えるわけです。

たとえば、伝統産業であれば、受け継がれた技術や文化を守りたい、とか、自分はいいけど、下請けに依頼する仕事が減ってしまう、とか、従業員がその変化を受け止められない、など、ただ「利益」を求めるのではなく、「〇〇による利益」を求めていることが多いのです。それを知らずして、お金だけの貢献を目指してもうまく行かないのです。