29.収益と貢献を一致させる

ismのコンサルタントにもっとも人気のある講座が「見積もりとワークフロー講座」です。
見積もりとは費用を見積もることではなく、まずは貢献を見積もること。
そして、そのためのプロセスとしてのワークフローがあり、工数の見積もりが生まれます。

この考え方の裏には、仕事に対する私の哲学があります。
仕事とは、社会の富を増やし、それを関係者の間で分配することです。
当たり前のことのようですが、実は仕事についての価値観は人によってそれぞれです。社会の富を増やさなくても、誰かの財布から自分の財布に富を移すことが仕事だと考える人もいます。

「お金儲けは良いことだ」と言う人がいますが、私は必ずしもそうだとは思いません。
私はお金がその人への感謝の量を反映しているなら、お金儲けは良いことだと思いますが、お金を儲けているからと言って、それだけ社会に貢献しているとは限りません。
一番効率の良いお金儲けの方法は、何もしないでお金だけを移すことです。利権を手に入れることで、不労所得をもらうような経営哲学では、お金を儲けたとしても、それだけ感謝されているわけではないでしょう。 「逆は必ずしも真ならず」です。

誰かが価値を生まずに収益を得ると、社会全体では富が減り、自分がたくさん貢献しても、たくさんもらえない人が生まれてきます。 頑張っているのに報われないわけです。
そうならないように、私は社内外を問わず、「信賞必罰」を心がけています。
自分も社員もお客様も競合も、働いた分だけ報いられなければならないと思うのです。

見積もりには、常にこの価値観が反映されます。
自分はどのくらい貢献しているのか。自分が逆の立場だった時に、この金額は損と思うか、得と思うか。 どちらかに偏っていてはいけません。
見積もりは社会全体の再分配の視点で考えるのです。

19.できるだけ少なく関わる

コンサルタントはアドバイスによって報酬をいただきます。報酬が高いほど、コストパフォーマンスは悪くなりますから、お客様の満足度を高めるためには、極力報酬を低くする必要があります。そのためには、出来るだけかかわる範囲を減らし、コストを減らすことです。たくさんかかわって、お客様をVIP待遇することが良いコンサルタントではありません。

契約をしたらクライアントの資産は自分の資産です。極力節約し、効率の良い方法で目的を達成しましょう。もっとも良いコンサルタントは、最小限のコストで、最大限の成果をもたらすコンサルタントです。

17.お客様が本当に求めているものを知る

お客様が、「ネットショップを作りたい」と言ってウェブ制作会社に相談したとします。しかし、お客様がネットショップでやろうとしていることは、仕入れ品を右から左に流すだけのネットショップだったとします。おそらくそれでは売れません。その時、「それではウェブサイトを制作しましょう」と言ってよいのでしょうか。

本当にお客様が求めているのは「ネットショップ」ではなく、「利益」ではないでしょうか。それなら、利益を生み出す提案をすれば何でも良いのか、というとそうではありません。コンサルティングをしていると良く感じることですが、経営者が求めているのは単なる利益ではないのです。事業の状況が良くない企業であれば、より利益を出すために、新しい取り組みをしなければならないときがあります。しかし、経営者としては、そのやり方が好きではない。市場が求めていて、社会にとって良いことだとしても、それをやりたくない、と言う方は多いのです。そこに、「経営者の求めるもの」が見えるわけです。

たとえば、伝統産業であれば、受け継がれた技術や文化を守りたい、とか、自分はいいけど、下請けに依頼する仕事が減ってしまう、とか、従業員がその変化を受け止められない、など、ただ「利益」を求めるのではなく、「〇〇による利益」を求めていることが多いのです。それを知らずして、お金だけの貢献を目指してもうまく行かないのです。

13.見積もりは語る

見積もりが嫌いな方は多いでしょう。その理由は、良好な関係を築きたいクライアントに対して、見積もりという作業は利害の綱引きに思えるからでしょう。仲良くしたい人に嫌な思いをさせる。言いにくいことを言わなくてはならない。そう思っている人は、おそらく費用だけを見積もっているのだと思います。

本当の見積もりは、まず成果を見積もり、次にそれに必要な費用を見積もるのです。お客様に言われたことをする作業者の視点だと、ついついお客様に言われた通りにするための費用だけを見積もってしまいがちです。お客様は、成果が見えず、費用だけを提案されると、お客様は極力費用を抑えたいと思うのです。しかし、お客様に貢献しよう、という視点で仕事を受けるなら、まずはお客様にどう貢献できるか、成果の企てから入ります。その結果、ベストな成果を出すための費用の提案が可能になります。お客様は、より良い成果のために費用が増えるのであれば、そのほうが良い、と思うのです。これが貢献を見積もる、と言うことです。

そういう視点で見積もりをするなら、見積もりは成果を決める重要なステップであり、またお客様に対して、「自分は言われた通りにするのではなく、お客様にとってもっともよい選択肢を提案したいのだ」という価値観が伝わります。これによって信頼が生まれ、一歩成功に近づくのです。見積もりを見るだけでその人の価値観や姿勢が伝わるのです。

12.コンサルタントは挨拶も商品

コンサルタントの仕事は経営者にアドバイスをすることだ、と思う方が多いでしょう。しかし、経営者からは、経営者以外の社員や、社外のパートナーへの好影響も期待されています。社長がコンサルタントと契約して、毎月打ち合わせをしている、となると、必ずどの会社でも議論が巻き起こります。「どんな人だろう」「なぜ必要なんだ」「自分たちでは足りないのか」など。必ず周囲からの注目を浴び、何者なのか、それだけの費用を払う価値がある人なのか、という査定の目で見られます。

社員の皆さんと直接お話をする機会があれば、自分が来た意味、提供できる価値についてご説明でますが、必ずしもそこまでの機会を与えられるわけではありません。そんな場合でも、少ない接点でも、良い影響を与えられるように努めます。クライアント企業を訪問するときの服装、あいさつの仕方、電話を掛けるときの言葉遣いなど、多少の接点や、見ていただく機会があります。そういうところでも、「社長が連れてくるだけあって、ちゃんとした人だな」と思ってもらえなければなりません。そういう思いを持っていただけるよう、あいさつで語る、背中で語る、振る舞いで語る、という意識が必要です。コンサルタントは挨拶も商品なのです。

10.ウェブプロフェッショナルはゼネラリストであれ

ウェブサイトの重要性はますます高まっています。あらゆる業界、企業、あらゆるサービスに関連し、ウェブサイトを意識せずにすすめられるビジネスは無いと言えるほどです。つまり、ウェブは事業の根幹、経営の根幹と結びついているのです。

だからこそ、ウェブに関するプロフェッショナルは、ウェブ業界だけを見るのではなく、大局的な視点を持ち、あらゆる業界、企業、サービスに対して最適な活用を提案できるようになった欲しいものです。しかし、もともと少ないコストで始められるウェブマーケティング会社、ウェブ制作会社は、少人数の会社が多く、事業領域もとても狭い会社が多いようです。

だからこそ、いま経営が語れるウェブプロフェッショナルが求められています。ウェブ専門家の価値が高まるかどうかも、経営に貢献できるかどうかにかかわっています。だからこそ、ウェブプロフェッショナルはゼネラリストであるべきなのです。

9.病名を判断するのは患者ではなく医者

患者さんが「食中毒みたいです」と言ったからと言って、それをうのみにして抗生物質を処方する医者はいないでしょう。まともな医者なら、症状から推測できる病気を想像し、検査をし、その上で治療をするでしょう。

同じように、ウェブ制作会社が、お客様から「ウェブサイトを作ってください」と言われたら、そのままウェブサイトをつくるのは良いことでしょうか。お客様としては、たとえば集客が目的であったり、顧客により詳細な商品、サービス情報を発信するのが目的であったりします。しかし、集客が目的なら、ウェブサイトをつくるだけでは成果が出ず、リスティング広告も利用しなければならなかったり、ネット集客よりも織り込みチラシや、実店舗や町の看板の方が適していることもあるでしょう。

お客様は、いまの自分にとってベストな方法を一生懸命考えてご相談にいらっしゃいます。だからこそ、その思いを尊重し、求めるものを実現したい気持ちもわかります。しかし、それが的外れであったり、とても難しかったり、予算がかかる場合もあるのです。だからこそ、プロフェッショナルは、お客様の求めることをそのままするのではなく、お客様のためになることをしなければなりません。