30.石の上にも3年

不思議なもので、なんでも3年頑張ると一つの臨界点を迎えて、見えなかったものが見えるようになります。私の人生の経験上、3年というのはそういう節目の期間であり、スポーツでも、勉強でも、事業でも、3年間取り組むと自分が少し卓越するのが感じられるのです。
だからこそ、社員にも3年取り組むよう指導しています。

コンサルタントはお客様にアドバイスをすることで費用をいただきます。それだけ価値があるアドバイスを出来るようになるには時間がかかります。
だからこそ、当社では新入社員に、「入社したら3年は辞めずに頑張りなさい」と伝えています。そして、それを承諾する人でないと採用しないようにしています。
しかしながら、3年務められた人は数えるほどしかいません。今でも一緒に働いている小清水貴子さん、いまは独立して活躍している村上佐央里さん、春日井順子さん、それ以外にも、転職して別の場所で活躍している人が二人。
確かに、みなとても優秀でしたが、彼らが仕事を続けられたのは優秀だからではないでしょう。自分の可能性を信じていたからだと思います。
3年続ける、と言いながら、続けられなかった人は「自分は向いていない」と言います。しかし、向いているかどうかがわかるのに3年かかります。続けられた人たちも、3年たつまでは自分は向いていないのでは、と思っていました。
それでも、続けたのです。その結果、限界を超え成長するのです。
重要なのは自分への信頼です。

そして、これはイノベーションも同じです。
普通イノベーションには時間がかかり、やはり3年くらいかけて取り組みます。それも、今の事業領域の先行きが不透明になってから着手するので、3年の間に事業の状況はさらに悪化することが多いです。最初は大きくチャレンジするつもりで取り組み始めても、徐々に事業の状況が悪化してくると、大きなチャレンジが怖くなってしまいます。その結果、イノベーションにブレーキがかかり、最初に描いた事業と実現したものが違うものになってしまうのです。
そうならないようにするためには、自分に対する信頼が必要です。
自分を信頼できるのは、動機がお金ではなく、損得を超えた価値観があるからなのです。

27.長期利益と短期利益は対立する

ネットショップさんを見ていると、毎月のように何らかのセールやキャンペーンを行っている方がいます。

ただでさえ忙しいネットショップで、イベントまでやっていると、商品開発や業務改善など、3年後、5年後のための準備には全く着手できないのではないでしょうか。毎月の利益を最大化することが、1年の利益を最大化することだと思っている方がいますが、これは間違いです。
1年の利益を最大化するためには、閑散期は赤字になってでも繁忙期のために業務効率改善に取り組んだり、より利益の取れる商品を開発をするべきです。
その分、目先の利益は減りますが、長期の目線で見ると、毎月短期的な収益を追いかけるよりも、長期的な利益を目指して積極的に経営のバランスを崩したほうが成果は高まります。

短期的な利益と長期的な利益は対立するのです。

アマゾンが上場したときに、ジェフ・ベゾスは株主に手紙を送ったそうです。そこには、「健全な経営と株主利益の両立のためには、長期投資しかない」というメッセージが書かれていたそうです。つまり、目先の経営成績でとやかく言うな、ということです。
フォーブス誌の長者番付で世界一にもなった、投資家のウォーレン・バフェットは、株を短期的に売り買いせず、本当に価値ある事業者に長期投資をすることで知られています。その結果、世界一の投資家として知られ、今でも活躍しています。

社会の変化が早くなったからこそ、長期の目線を持たなければ、効率よく利益を生むことはできないのです。

24.お金を追うな、貢献を追え

私は小学生の頃にサッカースクールに通っていました。小学校低学年のサッカーは、全員がただひたすらボールを追いかけ、ボールの取り合いでした。ボールを取った後のことなど考えていません。とにかく、味方も敵も、みんながボールを追いかけます。それが点を取るための最善の手段だと思っていたからです。
しかし、人だかりになっているボールの周りではまともなプレイもできず、どちらのチームも効率よく点を取ることはできませんでした。

なぜこのような効率の悪いゲームになってしまうのでしょうか。

それは、みんな考えることが同じだからです。
他のプレイヤーと同じことを考えているから競争になるのです。

実は経営でも同じことが言えます。
つまり、多くの経営者が、同じくお金を追いかけているため、みずから競争の激しいビジネスに身を投じています。

しかし、お金を追いかけないと儲からないだろう、と思うでしょう。
実はそうではありません。
いますぐにお金が儲かりそうになくても、これから儲かりそうなこと、つまりボールが転がり出てきそうなところを見極めるのです。それがお客様のニーズを追いかける、ということです。

いますぐにお金が儲かる分野でなければ、競争が少なく、収益効率が良いのです。
簡単に言えば、消費者が求めているのに、儲からなさそうなことをやる、ということです。。

22.作業に逃げるな

以前お世話になった大変優秀なデザイナーさんは、ウェブデザインをするときにほとんど手を動かさず、デザインを見ることにじっくりと時間をかけていました。
少し触っては、腕を組んで数十分も考えるのです。1ページをデザインするのに数時間かけていましたが、ツールに触れる時間はわずかでした。

一見すると、のんびり仕事をしているようにも見えますが、実際は彼の頭の中では、すごいスピードで思考が巡り、よりよいクリエイティブのためのシミュレーションが繰り返されていたことでしょう。

逆に、ずっとツールを動かしている人はとても忙しく仕事をしているようですが、思考よりもツールの操作がボトルネックになり、頭の中は休んでいる状態が多いと思います。
こういう仕事をしていると、手はたくさん動いているので、本人的には「働いている」という実感がありますが、よくよく見てみると、作ってみて、間違いに気づき、結局やり直す、という無駄な作業がたくさん生じてしまうのです。
本当は、もっとじっくりと考えて、ゴールを見通してから作業をしたほうが効率が良いのではないでしょうか。

これはデザイナーに限った話ではありません。

知的労働をするすべての人に同じことが言えます。
企画書を作ろうと思うと、ついついプレゼンテーションツールを立ち上げてしまう。そんな方が多いでしょう。しかし、それは設計図も書かずに家を建てるようなものです。設計図も書かず、いきなりのこぎりや金づちを持って動き始める大工さんに良い仕事ができるとは思えません。

経営も同じです。

経営戦略のシミュレーションを十分にせず、本当にうまくいくのかどうかを見通さないまま経営をしている方が多いのではないでしょうか。

もっともっと、考えることに時間を割きましょう。

私の場合は、デザインでも企画でも、ほとんどの時間は紙とペンを使って考えています。
そして、ある程度固まったら、マインドマップツールで優先順位や大小感を整理し、実現までのイメージを見通してから、初めてツールに触れます。
デジタルで資料を作成せず、手書きの殴り書きの資料をコピーして配布することもしばしばですが、それができるのは、内容に価値があると考えるからです。

20.絶対に必要なものの中から何かを捨てる

新しいことを始めるためには、今やっていることの何かを捨てる必要があります。新しい取り組みが大きなものであったり、急いでいればなおさらです。

「そうはいっても、今やっていることはすべて大切で、やめられない」という方がおられます。しかし、どうしても捨てられない、と思う仕事の中から、無理やりにでも何かを捨てるからこそ、新しいことに着手できるのです。捨てることで短期的に経営が悪化することもありますが、新しいことへの取り組みによって、長期的に経営にプラスになる面があるはずです。

経営者たるもの、今やっていることはすべて重要なのは当たり前です。それでも、もっと重要なことをやるために、何かを捨てる。だからこそ、事業が変化し、前に進むのです。

18.ポストが赤いのも経営者の責任

曲面ミラーで有名なコミー株式会社の小宮山 栄社長の言葉です。

経営者は、理不尽なことでも、すべて自分の責任だと思え、と言う意味です。経営をしていると、環境変化やたまたま運悪く、従業員の事故や病気など、コントロールの及ばないさまざまな問題で経営危機が訪れます。それを、「運が悪かった」と嘆いていても始まりません。そんなことがあっても、「自分の準備不足だった」「次に同じようなことがあった時に備えよう」という当事者意識が必要なのです。

社内だけではなく、社外、業界、社会、世界、すべてに思考が及び、そのリスクを覚悟しなければ、経営は苦痛になるでしょう。

16.初めに小さな成功を

イノベーションを起こそうとすると、かならず社内に善意の抵抗勢力が現れます。これは失敗を避けるための組織の機能ですから、必ずしも悪いことではありませんが、全社一丸となってチェンジしようとするときにはマイナス要素となり得ます。

だからこそ、イノベーションを起こすときは、出来るだけ短期間で、成功の兆しを見せ、安心してチェンジに取り組んでもらえる雰囲気をつくることが必要です。小さなテストを行い、成果をだし、その成果をしっかりと組織に周知徹底する。これによって、明るい未来が共有でき、イノベーションへの抵抗は減ります。