15.差別化ではなく差別的優位点

お客様に選ばれるためには、競合他社との違いが無ければなりません。しかし、違っていれば良いというわけではなく、お客さまから見てその違いが「価値」と感じられなければ選ばれる理由にはなりません。

たとえば、年配者向けの健康食品の会社が、お客様に選ばれるために、成分としてビタミンCを加えたとします。大は小を兼ねると言いますから、まったく同じであるよりも、追加で何らかの成分が入っていた方が、選ばれやすいと感じるかもしれません。しかし、お客様の立場になってみれば、いま期待している健康効果に近いものでなければ、価値とは感じにくいものです。差別化は出来ましたが、差別的優位点にはなっていない、ということです。

当たり前のことのようですが、この違いに気付きにくいのは、お客様のニーズが変わった時です。たとえば、かつて不動産屋は同じような物件を扱っていても、駅前にあることで利便性と言う差別的優位点で勝負していました。しかし、最近では、ネットで物件を探す方が増え、以前は優位点であった「駅間にある」という立地は優位点ではなくなったのです。顧客の変化により優位性とみなされる価値も変わるということです。

14.値段が高いのではなく、価値が足りない

継続的に利益が出ていないお客様には、まず値上げを提案します。しかし、値上げに抵抗がある経営者さんはとても多いです。「高くすると売れない。」「当社の消費が売れないのは高いから。だから値上げをするともっと売れなくなる。」そんな意見を良く聞きます。

しかし、「高い」というのは何と比較して高いのか。同じ商品を販売している競合他社がいたとしても、より良いサービスを提供することで、高くても買ってもらえることがあります。また、似たような商品でも、少しでもオリジナリティ、他社との違いがあるのであれば、そこに価値を見出してくれる方なら、その分高くても買ってくれるでしょう。

つまり、高くても、それ以上に価値があれば買ってもらえるのです。つまり、「高いから売れない」というのは、「競合他社より高いから」ではなく、「商品の価値より高いから」という意味です。それなら、やらなければならないのは商品の価値を磨くことではないでしょうか。

11.ターゲットを絞り込む 戦略が動き出す

事業をつくるということは、価値をつくるということです。モノをつくれば必ずしも価値が生まれるわけではありません。ビールが飲みたい人にジュースを与えても価値を感じてもらえません。価値とは、特定の誰かにとっての価値であって、万人に共通の価値と言うのはありません。

だからこそ、事業の枠組みである戦略を立てるときに最初に考えなければいけないのは、「ターゲットとなるお客様は誰か」と言うことです。普通は常日頃から接しているお客様の中で特定のタイプの方をイメージしたり、自分自身の経験から、「こんなときにこんなモノがあればいいのに」といった具合に、ターゲットをイメージします。

これが出来ないと、戦略を立案するのは難しいのです。良くある失敗は、ずっと長い間同じようなお客様に同じような価値を提供している場合です。従来のお客様は自社の提供する商品やサービスに満足しているからこそお客様で居続けれくれるわけです。だから、ついつい「自社の商品への満足度は高い」と思ってしまいがちです。しかし、実際は満足している人しか買っていない、と言うだけです。また、卸業や、代理店の下請けをしていると、お客様と直接接することが無いため、お客様が自社の商品に満足してくれているかどうか、買ってくれているのはどんなタイプのお客様なのか、などが見えなくなってしまいます。

この状態が長いと、戦略を立てるためのお客様理解(市場のニーズの分析)に時間がかかってしまいます。そんなときは、とにかくお客様に会いに行くことです。

8.パッション・ポジション・ミッション(情熱・戦略・価値観)

強みが無ければ戦略は立てられない、と思う方が多いようです。しかし、実際のところ、多くの小企業は強みと呼べるほどの強みがありません。そんなときは、強みをつくるところから始めます。

そのために、最初に必要なのはパッション(情熱)です。情熱をもって何かをやり続けられるか。石の上にも三年です。それが出来るのであれば、その分野において、他の誰かよりも卓越することが出来ます。単純作業であっても、競合よりも卓越することで、効率が上がり、収益的には差が付きます。その結果として、商品やサービスが改善され、強みとなるのです。

強味が生まれたら、その強みを生かしたポジションを作ります。強味が生きるポジションを取ることで、お客様から見てもその強みがわかりやすくなり、得意な仕事に集中することが出来、商品サービスはさらに洗練されます。さらにそれを継続していくことで、だれから見ても「その仕事なら〇〇さんに頼むべきだ」という共通認識が生まれます。

また、同じように、自分自身にとっても「〇〇なら自分たちが一番得意だから、それだけに集中すればもっとお客様や社会に貢献できる」と思えるようになります。そうなると、他の商品、サービスを捨てることに怖くないでしょう。これがミッションです。いまは何も強味が無いと思う企業でも、パッションを持ち続けることで、必ずミッションを見出すでしょう。これは大変な努力を要することではありますが、難しいことではありません。なぜなら、それをやる人が少ないからです。情熱をもって働くことで、自ずと差がつくのです。

7.まずは大きく捨てる

当社はイノベーションの支援が多いですが、最初にやるのはお客様の事業の中で、優先順位の低いものを辞めていただくことです。次の10年をつくるような大きなイノベーションのためであれば、仕事の3割くらいを辞めていただいて、その分を新しい事業をつくることに使っていただきます。

当社でもism事業という新規事業に取り組みましたが、その時は約半年の間、売り上げを4割落として、その分の時間を新規事業に充てました。その分の赤字を利益で埋め合わせるのに3年以上かかっています。一般的な会計の考え方で言えば、毎年の決算書と言う成績表で黒字にするのが良い経営だと言われます。これが上場企業なら、四半期ごとにその経営成果を公開し、それが黒字であることが望まれます。しかし、このような会計基準で経営戦略が左右されるのはおかしなことです。正しくは、企業が社会に貢献し続けるために、計画的に赤字をだす必要があります。黒字のまま新規事業に取り組めるとしたら、常日頃相当の労働力が余っているということでしょう。

しかし、そうはいっても大きな赤字を出すのは不安でしょう。そこに、経営者の覚悟が試されるのです。大きく捨てなければ大きく取り組めません。そして、大きく捨てるには大きな覚悟が必要なのです。それが経営者の器と呼べるものかもしれません。

5.ウェブサイトは経営者の価値観を表す

経営者にとって会社は自分自身であり、会社案内であるコーポレートサイトは自分のプロフィールのようなものです。そして、経営者が事業をコントロールするのは簡単ではありませんが、コーポレートサイトは指示さえすれば変えられます。だからこそ、ウェブサイトは経営者の価値観が色濃く出ます。

単に表面のデザインがかっこいいだけ、動きが派手なだけの自慢のようなサイトになっていないか。発言の一つ一つに魂がこもっているか、メッセージがあるか。それとも当たり障りのない内容に終始しているか。また、事業の見せ方としても、部署ごとの事業のサマリーになってしまっていないか、それとも戦略が伝わる、フォーカスされた内容になっているか。

また、古くから採用を大事にしていない会社は伸びないと言いますが、求人ページを見れば採用に対する姿勢もわかります。企業との接点として、接触回数が最も多いのは、かつてはマス広告や店頭での商品でしたが、最近では企業を知る上でもっとも多く接触するのはウェブサイトになってきました。だからこそ、ウェブサイトは企業がお客様に対してどのような姿勢を持っているかをもっとも雄弁に語っているのです。

1.リーダーを支えるリーダーを育てる

社会が大きく変化するときは、いままでどおりの仕事をしていてはいけません。
消費者の価値観が変化するため、これまでの価値は陳腐化し、新し価値を生みだす必要があります。それが出来るのがリーダーです。従来の枠組みを壊し、新しい枠組みを作り出す。そんなリーダーのもとで、多くの人々が力を発揮するのです。今社会はこれまでになかったスピードで変化しています。

だからこそ、あらゆる業界で、これまで以上にたくさんのリーダーが必要です。
しかし、リーダーは経験からしか生まれません。自らの行動で何かを変えて、成功した経験、それがリーダーをつくります。

つまり、リーダーを生み出すには、チャレンジしやすく、成功しやすい環境が必要です。私は、それが今はネット業界だと考えています。ネット業界では新しいビジネスが生まれ、若くして起業する方も増えています。そういう人材が成功体験を得て、10年後、20年後に他の業界で新しい革命を起こす人材だと信じています。だからこそ、私はネット業界を中心に、リーダーを育成しています。