当社はイノベーションの支援が多いですが、最初にやるのはお客様の事業の中で、優先順位の低いものを辞めていただくことです。次の10年をつくるような大きなイノベーションのためであれば、仕事の3割くらいを辞めていただいて、その分を新しい事業をつくることに使っていただきます。
当社でもism事業という新規事業に取り組みましたが、その時は約半年の間、売り上げを4割落として、その分の時間を新規事業に充てました。その分の赤字を利益で埋め合わせるのに3年以上かかっています。一般的な会計の考え方で言えば、毎年の決算書と言う成績表で黒字にするのが良い経営だと言われます。これが上場企業なら、四半期ごとにその経営成果を公開し、それが黒字であることが望まれます。しかし、このような会計基準で経営戦略が左右されるのはおかしなことです。正しくは、企業が社会に貢献し続けるために、計画的に赤字をだす必要があります。黒字のまま新規事業に取り組めるとしたら、常日頃相当の労働力が余っているということでしょう。
しかし、そうはいっても大きな赤字を出すのは不安でしょう。そこに、経営者の覚悟が試されるのです。大きく捨てなければ大きく取り組めません。そして、大きく捨てるには大きな覚悟が必要なのです。それが経営者の器と呼べるものかもしれません。